旧開智学校に行ってきた|松本市の国宝校舎で感じた、AI時代の「学ぶ力」の原点

旧開智学校の外観
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松本市の国宝・旧開智学校に行ってきました。

最初は、明治時代の美しい校舎を見に行くつもりでした。白い外壁、八角形の塔屋、和風と洋風が混ざった独特のデザイン。松本城から歩いて向かうと、武家社会から近代教育へ、時代が大きく切り替わっていく流れをたどっているようにも感じます。

けれど、実際に中を見て一番強く残ったのは、建物の美しさだけではありませんでした。

木の机、古い教科書、算数の教材、先生たちの試行錯誤の記録。

そこには、昔の人たちが「学ぶこと」に向き合っていた熱気のようなものがありました。

今は、わからないことがあればすぐに検索できます。動画で説明を見ることもできます。AIに質問すれば、かなりのことを一瞬で整理してくれます。

だからこそ、150年ほど前の子どもたちが、限られた教材と先生の言葉を頼りに、文字を読み、数を考え、世界を理解しようとしていたことに、強く心を動かされました。

旧開智学校は、明治の学校建築を見られる観光スポットであると同時に、AI時代の今だからこそ「学ぶとは何か」を考えさせてくれる場所でした。

旧開智学校とは?松本市にある国宝の学校建築

旧開智学校は、長野県松本市にある明治時代の学校建築です。

明治初期に建てられた校舎で、和風と洋風が混ざった「擬洋風建築」として知られています。正面には八角形の塔屋があり、白い外壁と木造校舎の雰囲気が印象的です。

現在は教育博物館として公開されており、当時の教室、教材、学校制度、教育に関する展示を見ることができます。

旧開智学校は、単に「昔の学校を保存した建物」ではありません。

明治時代の人たちが、新しい時代に向けて教育をどう整えようとしたのか。子どもたちに何を教え、どのように学ばせようとしたのか。その試行錯誤が、校舎全体に残っている場所です。

建築が好きな人はもちろん、歴史、教育、地域文化に関心がある人にもおすすめできます。

松本城から旧開智学校へ|徒歩で回れる国宝ルート

松本城と赤い橋

今回は、松本城を見てから旧開智学校へ向かいました。

松本城は、戦国から江戸時代へ続く武家社会の象徴のような存在です。一方で、旧開智学校は明治以降の近代教育を象徴する場所です。

この2つを徒歩で回れるのが、松本観光の面白いところだと思います。

黒い天守が美しい松本城を見たあと、白い旧開智学校へ向かうと、同じ松本市の中でありながら、まったく違う時代の空気に触れることができます。

松本城が「城下町としての松本」を感じる場所だとすれば、旧開智学校は「学びの町としての松本」を感じる場所でした。

松本城だけを見て帰る人も多いかもしれませんが、時間があれば旧開智学校まで足を延ばすのがおすすめです。歩いて移動できる距離なので、松本城とセットで訪れると、松本の歴史を立体的に感じられます。

教室・木の机・古い教科書で感じた学びの熱気

教室全体

旧開智学校の中で、特に印象に残ったのは教室です。

木の机と椅子が並び、黒板があり、壁には教材が置かれています。今見ると机は小さく、素朴で、少し窮屈にも見えます。

教室とハルモニウムオルガン

説明によると、この木の机は本来2人掛けだったそうです。

一緒に行った両親が、それを見て「懐かしい」と話していたのが印象的でした。

私にとっては歴史資料のように見えるものでも、両親にとっては自分たちの学校の記憶とどこかでつながっているものだったのだと思います。明治の学校の風景は、完全に遠い過去ではなく、昭和の学校の記憶とも少し地続きになっているのかもしれません。

教室を見ていると、当時の子どもたちがここに座って学んでいた姿を想像します。

快適な設備があるわけではありません。情報も限られています。それでも、学校という場所に集まり、先生から学び、文字を読み、数を考え、世界を理解しようとしていた。

そこには、単なる懐かしさではなく、学ぶことへの切実さのようなものがありました。

昔の教科書を手に取って感じた、文字で理解する難しさ

展示の中には、昔の教科書を実際に手に取れるものもありました。

昔の教科書、朝鮮・日本列島などの記述

ページをめくると、縦書きの文字がびっしりと並んでいます。今の教科書のように、カラー写真や図解が豊富にあるわけではありません。

文字を読む。意味を追う。自分の頭の中で理解する。

それを積み重ねて学んでいたのだと思うと、昔の人たちの集中力や読解力の高さに驚かされます。

今は、わからないことがあれば検索できます。動画で説明を見ることもできます。AIに質問することもできます。でも、当時はもっと限られた情報の中で、知識を身につけるしかなかった。

特に印象に残ったのは、歴史と算数の教材です。

歴史の教科書には、今とは違う時代の価値観がそのまま残っていました。帝国時代の歴史観や、国の見方、世界の捉え方。現代の私たちがそのまま受け取ることはできない内容もあります。

でも、教科書というものは、その時代の社会が「子どもたちに何を知ってほしいと思っていたか」を映すものでもあります。

古い教科書を見ることは、単に昔の知識を見ることではなく、その時代の空気を読むことに近いのだと感じました。

算数の教材も、かなり難しそうでした。

算数の教科書
乗算九九図、線及度図

九九や線、度量衡に関する教材が並んでいて、今見ても簡単には感じません。むしろ、昔の子どもたちはこれをどう理解していたのだろう、と考えてしまうくらいでした。

便利な道具が少ない時代に、紙と文字と先生の説明で、数や図形や単位を学んでいく。

昔の教育というと、今より単純だったように思ってしまいがちですが、実際に教材を見ると、むしろかなり密度が高いように感じました。

男女教育・障がい者教育への試行錯誤

旧開智学校で興味深かったのは、当時の教育が決して固定されたものではなく、先生たちが議論し、試行錯誤していたことです。

男女の教育についても、当時は「男は仕事をし、女は家庭を守る」という考え方がありました。もちろん、現代の価値観から見ると古い考えです。

ただ、展示を見ていると、それだけで単純に片づけられるものでもないのだと感じました。

男女の差を前提にしながらも、それぞれのよいところを伸ばそうとしたり、試験的に同じ教室で学ばせてみたり、先生方が議論しながら教育の形を探っていた様子がうかがえました。

私は女性なので、昔の教育に対して「単なる男尊女卑だったのでは」というイメージを持っていた部分もあります。

けれど、実際にはその時代なりに、教育のあり方を考え、試し、変えようとしていた人たちがいたのだと思います。

もちろん、現代から見れば不十分な部分はたくさんあります。それでも、過去の人たちを一方向からだけ見てしまうのは違うのかもしれない。そう感じました。

障がいのある子どもたちへの教育についても、工夫があったことが紹介されていました。

能力別のクラス分けもあったそうですが、子どもたちがいじめられないように、どのクラスかが分かりにくいような配慮もされていたとのことです。

これはとても印象に残りました。

昔の教育というと、厳しくて画一的なものを想像しがちです。けれど、実際には子どもたちの状況に合わせようとする工夫や、傷つけないための配慮もあった。

教育とは、いつの時代も「どうすればよいのか」を考え続ける営みなのだと思いました。

先生は、地域の知を残す人でもあった

旧開智学校では、先生をしながら重要な郷土資料を書き上げた人物についても紹介されていました。

これも、今に通じるものがあると感じました。

先生という仕事は、子どもたちに知識を伝えるだけではありません。地域のことを調べ、記録し、次の世代に残していく役割も担っていた。

教育者であり、研究者であり、記録者でもある。

今のように情報発信の手段が多くなかった時代に、地域の知を残すことはとても大きな意味を持っていたはずです。

学校という場所は、子どもたちのためだけではなく、地域全体の知識を支える場所でもあったのだと思います。

寺の名残、桟唐戸、色ガラス、ハルモニウムオルガン

旧開智学校は、和洋が混ざった建物として見ても面白い場所です。

2階に上がると、扉や柱など、ところどころに寺の面影が残っていました。特に印象的だったのが、桟唐戸と呼ばれる扉です。

桟唐戸

一見すると寺院風の印象が強い扉ですが、学校の中にあることで、建物全体に不思議な奥行きを与えていました。

これは、廃仏毀釈の名残でもあります。

明治という時代は、新しいものを取り入れる時代である一方で、古いものが壊され、別の形で使われていった時代でもあります。

旧開智学校の中に寺の部材が残っていることは、単なる装飾ではなく、時代の激しい変化の痕跡なのだと感じました。

2階広間、色ガラス、ハルモニウムオルガン

2階には、修理されたばかりのハルモニウムオルガンも置かれていました。

教室や展示室の雰囲気とは少し違って、そこには音楽の時間や式典のような空気を想像させるものがありました。

また、色ガラスも印象的でした。当時はヨーロッパから輸入していたそうです。

学校でありながら、どこか教会や洋館のような雰囲気もある。和風の扉や寺の部材がある一方で、洋風の窓や色ガラスもある。

旧開智学校は、ただ和洋折衷というだけではなく、いろいろな時代や文化が重なった建物なのだと感じました。

図書袋など地域の学校文化

面白かったのが、図書袋の展示です。

図書袋展示

図書袋とは、小学生が学校の図書館で本を借りる時に使う袋のことです。長野県では使っている学校も多いそうで、展示では全国で図書袋を使ったことがあるか調査した内容も紹介されていました。

私は使ったことがないので、最初は「図書袋?」という感じでした。

でも、こういう小さな学校文化の違いは面白いです。

全国共通だと思っていた学校の風景も、地域によって少しずつ違います。教科書や校舎のような大きな歴史だけではなく、図書袋のような日常の道具にも、その地域の教育文化が残っているのだと思いました。

旅先でこういう展示に出会うと、その地域の暮らしや学校生活が少し立体的に見えてきます。

旧開智学校はどんな人におすすめ?

旧開智学校は、次のような人におすすめです。

  • 松本城とあわせて、松本市内の歴史スポットを回りたい人。
  • 明治時代の建築や、和洋折衷のデザインが好きな人。
  • 昔の学校、教科書、教育制度に関心がある人。
  • 親子旅や家族旅行で、世代によって感じ方が違う場所に行きたい人。
  • AI時代の今、あらためて「学ぶこと」について考えたい人。

特に、松本城だけで観光を終えるのは少しもったいないと感じました。

松本城が「武家社会の歴史」を感じる場所だとすれば、旧開智学校は「近代教育の始まり」を感じる場所です。

2つをセットで回ると、松本という町の歴史の見え方がかなり変わります。

チケット・所要時間・松本城との回り方

旧開智学校は、公式サイトから電子チケットを事前購入できます。

私が確認した時点では、旧開智学校単独券は、電子チケットの方が窓口購入よりも一般料金で100円安く案内されていました。行く日が決まっている場合は、事前に公式サイトを確認しておくとよいと思います。

また、松本城と旧開智学校を一緒に回る場合は、共通券も選択肢になります。

松本城+旧開智学校の共通観覧券や、松本城・旧開智学校・松本市立博物館・松本市美術館を含む4館共通券が販売されていることもあります。

KKdayでも、松本城の入場チケットとして、旧開智学校とのセット券が販売されている場合があります。

松本城と旧開智学校を両方見たい人は、公式サイトだけでなく、KKdayなどのチケットサイトも確認しておくとよいです。

ただし、電子チケットはキャンセルや変更ができない場合があります。また、共通券は施設ごとに休館日が異なるため、購入前に必ず営業日と最終入場時間を確認するのがおすすめです。

所要時間は、建物だけをさっと見るなら30〜45分ほどでも回れると思います。

ただし、展示をじっくり読み、教科書や教材も見ていくなら、1時間〜1時間半ほど見ておくと安心です。

松本城とあわせて回る場合は、半日ほどあるとゆとりがあります。

おすすめの回り方は、先に松本城を見て、その後に旧開智学校へ歩いて向かうルートです。

松本城で江戸時代以前の松本を感じ、旧開智学校で明治以降の学びの歴史に触れる。そうすると、松本の歴史が一本の流れとして見えてきます。

AI時代に旧開智学校で考えたこと

旧開智学校を一通り見終わったあと、改めて思いました。

昔の教育には、今の価値観から見ると古い部分もあります。男女の役割に対する考え方も、帝国時代の歴史観も、現代の私たちがそのまま受け取ることはできません。

けれど、そこで学んでいた子どもたちや、教えていた先生たちは、決してただ古い時代にいた人たちではありませんでした。

限られた教材の中で、文字を読み解き、数を考え、世界を理解しようとしていた子どもたち。

男女教育や障がいのある子どもたちへの教育について、議論し、工夫し、試行錯誤していた先生たち。

教えるだけでなく、地域の記録を残そうとしていた教育者たち。

そこにあったのは、学ぶことが自分や社会を変えていくという、強い実感だったのだと思います。

今の私たちは、当時とは比べものにならないほど便利な道具を持っています。検索もできるし、動画も見られるし、AIにも相談できます。知識にたどり着くまでの距離は、驚くほど短くなりました。

でも、その便利さの中で、「すぐに答えを得ること」と「自分で理解すること」は、少しずつ別のものになっているのかもしれません。

AIはとても便利です。私自身も日常的に使っています。

ただ、AIに答えを出してもらうだけではなく、その答えをどう受け取り、どう考え、自分の理解に変えていくのか。そこには、やはり人間側の学ぶ力が必要です。

旧開智学校で見た古い机や教科書は、そのことを静かに思い出させてくれました。

便利なものがなかったからこそ、昔の人たちは必死に学んだ。

そして、便利なものがある今だからこそ、私たちはもっと深く学べるはずです。

校舎内から外へ向かう扉と小さな机

旧開智学校は、単なる歴史的建造物ではありませんでした。

AI時代に生きる今だからこそ、「学ぶとは何か」を立ち止まって考えさせてくれる場所でした。

松本に行く機会があれば、松本城とあわせて訪れるのがおすすめです。

旅嬢Saori
【自己紹介】 あんまり英語ができないのにもかかわらず、気が付けばマイナーな国も含め40回以上海外に行っております、ごく普通のOLです… 近年は暇さえあれば、国内外を旅しております。 最近はマイルを貯めて航空券に交換したり、公式サイトのセールを狙ってみたり、個人手配にも挑戦したり。 英語のできる友人と旅行することが多いですが、一人旅もしています。 現地では英語ができない分、入念な下調べとIT技術で何とか乗り切っていますので、何かお役に立てれば幸いです。
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